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覚えたいことを覚えていられるか予測する(自問自答)

Canadian Journal of Experimental Psychologyに掲載された研究によると、何かを覚えていられるかどうか?を自問自答するという単純な行為によって、実際に覚えている可能性が1.5倍になるそうです。

これは、例えば、自分がやりたいと思っていること、行動・意図・約束などを思い出す場合に当てはまります。

予測するというのはセルフテストと似ていますが、自分にクイズを出すと言うことは、学習プロセスを加速させるのに非常に効果的だと言われています。

例えば、覚えたい英熟語や英単語を何度も繰り返して読むことにより、海馬や前頭前皮質が刺激されます。 もちろん、その多くは短期記憶としてすぐに忘れてしまいますが、脳はその刺激を何度も受けているうちにそれはやがて海馬で長期記憶に変換され、大脳皮質などに移されます。海馬によるエピソード記憶の形成や索引付けが向上し、後でアクセスしやすくなるのでしょうね。



日常的な出来事や、勉強して覚えた情報は、海馬の中で一度ファイルされて整理整頓され、その後、大脳皮質にためられていくといわれています。 つまり私たちの脳の中で、新しい記憶は、海馬に、古い記憶は、大脳皮質にファイルされているのです。

自分に問いかけ、自分で答える。どんなことに対しても、まずは、本当にそうなんだろうか?と疑問に思うこと。それがたとえ学校の先生が言っていることだとしても、まずはじめに、本当にそうなんだろうか?と問いをおこし、なぜそういうことになるのか?、なぜそういうことをする必要があるのか?、それをやったらどうなるのか?、そのことを言ったのは誰なのか?など、様々な自問自答をし、自分なりの答えを必ず出すことです。

出した答えが正しいのか?どうか?は、後に自分で調べて確かめてみると良いです。このような習慣を身につけることだけで、物忘れを予防することが出来ますので、あることを覚えたい時は、後で覚えていられるかどうかを自問自答するようにしてみましょう。


覚えたいことを口に出して言う(暗唱)

以前、Journal of Experimental Psychologyに掲載された研究によると、言葉を口に出して言ったり口を動かすだけでも、その言葉が弁別されるのだそうです。

頭の中に浮かんでいる、他のあらゆる単語と区別され、違うものに変わります。それによって言葉が記憶に残りやすくなります。なかなか他人のお名前が覚えられない人は、その人にお会いした時に、相手のお名前を口に出して話したり、心の中でお名前をお呼びしたりすると、会ったばかりでも、直ぐにお名前を覚えることが出来ます。

暗記学習に音読がおすすめなのは、音読をすることで脳の前頭前野という部位が活性化され、記憶力や判断力がアップするとも言われていますので、導入している学習塾も多いかと思われます。

僕は、暗唱したりするのは、経験上成功して来たこともありますが、脳科学的に関連あるものだと、ずっと思って来たので続けていましたが、どうも違うことが分かり複雑な心境になっています。



脳波とパフォーマンスの関係をご覧になられると、よく分かります。α波は、目覚めた状態でリラックスしていたり、集中している状態の時に、後頭部に著明に現れ、β波は、目覚めている時に通常出ている脳波で、緊張や心配事がある場合にも現れます。θ波はまどろみの時に、δ波は熟睡中や無意識の時に現れます。

暗唱するのを脳の働きから考えてみますと、先ず左脳は、言語脳で言語の処理を中心に行っています。左脳は、右脳よりも強力ですが、その分活動が粗いので、主にβ波を出しているのではないかと思われていました。最近では、音読などの言語的活動を行うと脳が活性化するそうですので、左脳がβ波が出しているとは言い切れないそうで、脳が活性化するということと音読をすると頭が良くなるということは、脳科学的には、関係がないのでは、と言われています。

左脳は、デジタル的な処理をしているので、短期記憶に制約されています。ですから言語処理をするときは、逐語的に少しずつ処理しては忘れていっています。 例えば、小説などの物語を読むとき、数語又は十数語の文字列から次々とイメージを作り、前の文字列はどんどん忘れながら読んでいきます。最後にストーリー全体はわかっているものの、個々の文字列は記憶に残っていません。

右脳は、イメージ脳で、イメージや音楽の処理を行っています。 右脳の処理はアナログ的なので、短期記憶に制約されません。例えば、景色を眺めているとき、その景色の中にある無数の要素がひとまとまりに頭の中に入ってきます。 例えば、雲1つ無い真っ青な空、静かに風が吹いていて、海辺の波打ち際での潮の音が聞こえる。潮の香り、セミの音、夏なんだなぁと、大量のイメージが一瞬にして右脳のイメージとして処理されます。

右脳の処理は静かですので、α波やΘ波を中心とした脳波になっているのだと思われていましたが、覚えた文章を音読しているときは脳が活性化せずにリラックスします。音楽を聴いていると心がリラックスするのはこのためですが、覚えた文章を音読しているとき右脳では、α波やΘ波を出しているとは言い切れないことが分かりました。脳がリラックスするということと音読をすると頭が良くなるということは、脳科学的には、関係がないのでは、と言われています。

記憶術の仕組みは、アナログのイメージはいくらでも記憶に残り、そのアナログのイメージに、覚えにくいデジタルの記憶を結びつけているようなものです。 暗唱は、言語をデジタル的に覚えるものなので、一度で覚えられるのは短期記憶の容量となる7文節ぐらいまでに限られています。30〜50文字なら一度で覚えられますが、これが100字ぐらいになると短期記憶の容量を超えてしまいます。ですが100字の文章であっても何10回と繰り返すと、丸ごと暗唱できるようになりますから、暗唱することをお勧めします。


あの人、名前なんて言ったっけ⁈

物忘れは、認知症の始まりとよく言われますが、実際は、どうなのでしょう?
例えば、車を運転している時に、良いアイデアが閃き、これは、とても良いと興奮したアイデアでしたが、1時間後にお家に着いたら忘れていたということって、よくあるかと思うのです。1時間以上思い出せなかったことが、本当は、そこまで素晴らしいアイデアだったのか?と思われるかも知れませんが、本当に覚えておきたかったことを忘れてしまったことは誰にでもあることでしょう。



巷では、脳トレなるものがあって、認知機能を鍛えると言われる類のものがたくさんありますが、記憶力を向上させるテクニックの殆どが、多大な努力を要するものばかりで、継続することが出来ません。それは、鍛えても衰える部分ですので、仕方ありません。

成功は常に行動に基づいていますが、行動は常に知識があって始まりますから、他の効果的な方法をご紹介しましょう。


脳トレより、人との会話

テレビや雑誌でもよくみかける脳トレは、脳力トレーニングの意味で、主に事故や病気で脳にダメージを受けた人や精神疾患の患者さんを対象に実施されていたことから、認知機能を改善し、記憶力や集中力などを鍛えるトレーニングと期待されてきました。

しかし、好きでもないのに脳のためにとやると、逆にストレスになったり、同じことの継続も慣れてしまい脳への刺激にはならず、脳トレは、差ほど効果が無いことが分かりました。また、言語を記憶する、問題解決能力を上げる、問題処理の能力を上げるというようなトレーニングをさせた場合、練習した課題のテストの点だけは上がるのですが、ほかの認知機能がさっぱり上がらないこともわかっています。

では、どのように頭を使うと良いのでしょう?ちょっと考えてみたいと思います。



例えば、人間の昨日として喋るがあります。喋るには、声を出す訳ですが、声は、喉の奥にある声帯という膜を、息で震わせて出しています。

声帯は、男性の喉仏の奥にあります。喉仏の小さい女性でも、同じような位置にあります。この声帯は、紙を口にあてて鳴らすのと同じように、震えることによって声を出しています。声帯は、普段は隠れていて、声を出したい時だけ、喉の中の空気の通り道に出てくる仕組みになっています。このため、普通の口で息をする時には声が出ません。

また、喋るためには、ただ音を出すだけではなく、音をアーやイーなどの言葉にしなければなりません。声を言葉にするには、口と舌が大切です。声帯の震えを、舌や口全体でいろいろ動かすことによって言葉になります。あ・い・う・え・おと実際に発音してみると、それぞれ口や舌の形がちがうことが分かると思います。

また、この声帯をコントロールしているのはやはり脳です。 脳の運動性言語中枢というところが司どっており、この部分が損傷を受けると言葉を聞いて理解することは出来ても喋ることが出来なくなります。喋るという機能だけで、こんなにも多くの脳での情報処理が行われていることになります。

その上、他人との会話となると、自分の話したいことに対し相手からの反応が返ってきます。強制的に頭を働かせなくてはいけない局面も増えます。もちろん、仕事や家事も複数の知的作業をともなうので、頭を使うことに繋がります。生涯現役というスタンスも、有力な脳トレになるかも知れませんね。



声帯は、喉仏を形成する甲状軟骨の中にある1~1.5cm程度の器官です。声は、左右二本の帯状の声帯が振動して生じます。 男性の会話では、毎秒100回、女性では毎秒250回も声帯が振動します。 この楽器の弦のような声帯の振動に異常があると、声が枯れ(嗄声:させい)を生じます。


「脳の専門家が選んだ「賢い子」を育てる かがくのおはなし50」

生まれた赤ちゃんの脳は、大体400g。それから2年経つと倍の約700gになると言われています。5歳児で約1300g、10歳児で大人と同じ脳重量になると言われてましたが、最近の研究観察では、2歳頃で既に3倍に達しているのだそうです。

脳画像研究の第一人者である瀧靖之東北大学加齢医学研究所教授監修の科学をテーマにした読み聞かせ本「脳の専門家が選んだ「賢い子」を育てる かがくのおはなし50」では、好奇心を育てることで、頭のいい子が育つという事実に着目し、身体の仕組みや宇宙・自然・地球・世の中の暮らし・昆虫など、バリエーションに富んだ子供が持つ様々な疑問に答えるお話50話を収録しています。子供が興味を持ったら、実物を見せたり、博物館に行ったりするなど具体的な楽しみ方も提案しています。



僕も3歳児と4歳児の親ですが、瀧靖之教授も11才の男の子のお父さんでもあり、子供の脳の発達から見る子育てのヒントを参考にさせて頂いています。東北大の教授リレーブログの中でも挙げられています。

脳の発達に重要な親子のコミュニケーション
ヒトの脳には約1000億個の神経細胞があります。この神経細胞同士がシナプスと呼ばれる神経伝達回路でつながり、ネットワークの道が作られることで情報処理が可能となります。脳は、この神経細胞の道路をたくさん作り、よく使う道路は太く丈夫にし、あまり使われない道路は壊していきます。子どもの脳は、このように道路を作り、整理することを繰り返して成長します。脳に効率の良い交通網を張り巡らすと、子どもの能力は高くなると考えられています。

また、神経細胞の繋がりが増えると脳の体積が増えていきます。生まれた赤ちゃんの脳は、大体400gで、2歳頃で3倍に達していると最初に述べました。つまり乳幼児期は、特に脳の成長速度が速いのです。

赤ちゃんの目を見て、語りかけ、やさしく抱きしめるなどの生後直ぐから始まる愛着形成(アタッチメント)は、赤ちゃんが親への深い信頼感を得られ、脳が育つ土台としてとても大事です。特に母国語を覚える時に、単に言葉だけでなく、表情やしぐさも含めてコミュニケーションとして覚えていくといわれ、非常に重要です。

赤ちゃんが何か声を発した時に、親がそれに応えるなどのやりとりは、テニスのサーブやリターンに例えてコミュニケーションのテニスとも言われています。コミュニケーションのやりとりによって、脳の神経細胞同士が繋がりが出来て、脳の中に道が出来ていく、まさに育脳ですね。また、幼児期の脳の発達には運動も大事ですので、一緒に外遊びやスポーツをするのも良いですし、一緒に楽器を演奏してみたりすることも、脳の発達にとても良いです。

いずれ他者との関わりも大事に時期を迎えますから、親子の会話や一緒に身体を動かす機会をたくさん増やしておきましょう。コミュニケーション能力は、将来の学業成績だけではなく、社会で生きていく上で大事な力となることでしょう。


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