ホームブログ

ブログ

学んだことが身につくときの脳の変化について…

記憶とは、学習の延長線上の現象です。
学習された情報が、どのように記憶として脳内に残されてるかについて、実は、そんなに分かっていませんでした。

私達にも長年の想いがあり、ある反復練習をし続けることによって身体が運動を覚える仕組みを知りたいと思っていたところですが、某大学研究班が、マウスを使った実験を通じて大脳皮質の神経回路の構造変化を捉えることに成功されていましたので、その経過をご紹介しつつ、運動指導者としての私の考えをも記しておきたいと思います。



脳では、神経細胞間で情報が複雑にやり取りされ、巨大なネットワークを形成されています。特に神経細胞間で情報を伝達する結合部はシナプスと呼ばれ、学習や記憶に非常に重要な働きをしていると考えられています。

実際に、マウスに特定の課題(運動トレーニング)をさせると、第一次運動野(大脳皮質の中の運動を担う領域)で、新たなシナプスが形成され、図のように神経回路が変化していることは分かっていました。

神経細胞間の情報伝達において、シナプスの強さが一時的に変化し、後に元に戻る性質のことをシナプスの可逆性と言います。これは、経験や学習によって脳が変化していくシナプス可塑性の一側面として理解出来ます。しかし、それを神経回路の変化として明らかにした研究が少なく、どの領野からの情報が、学習や記憶に重要なのかなど、その詳細も知られていませんでした。

そこで、学習過程において変化するシナプス結合を明らかにすることで、例えば自転車の乗り方や楽器演奏などの動作が、練習することで上達し、徐々に無意識に行えるようになる脳内メカニズムが明らかになるものと考えられました。



図の左側の学習前のシナプスは、GABAとグルタミン酸が分泌され興奮と抑制のバランスを取っています。図の真ん中の学習を始めると一時的にGABA分泌が減り、AMPA受容体のシナプス移行によってシナプスの機能と伝達効率を変化させます。図の右側の学習し続けると、GABAの分泌量は、元に戻り、グルタミン酸の分泌量が増え、興奮と抑制のバランスを保っています。

GABA(ギャバ)とグルタミン酸はどちらも脳内の神経伝達物質ですが、GABAは抑制性、グルタミン酸は興奮性というように、機能は真逆です。GABAはグルタミン酸から合成されますが、脳内で物質交換を制限する血液脳関門を通過できないため、食事やサプリメントで直接摂取しても脳の働きを助けることはできません。



人は無意識的な反射を予測して身体の動きを制御している…

運動神経が必要なのは、スポーツや楽器演奏といった高度なスキルが求められる場面ばかりではありません。グラつかづに立ったり、初めの一歩を歩みだしてまっすぐ歩くといった何気ない動きの背後にも、小脳と大脳皮質との連携プレーが、活躍しています。姿勢維持で大切な機能の1つに予測的姿勢調節があります。例えば、机に置いたペットボトルを右手で取って、立ったまま飲む動作について考えてみましょう。

片腕の重さは、約4〜5キロ。右腕を前に差し出すだけでも重心の位置は、前になるはずです。ペットボトルを持つと更に重心が前に振られます。それでも倒れないのは、腕を伸ばす前に、重心が前へ移動しても平気なように体幹や下半身の筋肉を適度に制御・抑制するからです。これが予測姿勢調節であり、その一連の命令も小脳が深く関わっています。スポーツでは、ペットボトルを手で取るよりも遥かに複雑な動作を組み合わせていますので、予測姿勢調節は、一層重要になります。

このようにスポーツでのスーパープレーから我々の何気なく行っている日常の動作まで、脳からの指令だけでなく筋肉や皮膚からの信号が脊髄を通じて生じる反射が、身体の動きを支えています。

その1つである伸張反射が、多感覚統合による身体表象を介して調整されることが、最新の研究成果より分かってきました。反射による運動制御が、従来考えられてきたより高度な脳内情報処理を経て行われている可能性を示唆しています。反射による運動制御とは、外界からの刺激に対して、意識を介さずに運動応答を生成する仕組みです。反射は、筋肉や皮膚からの信号が脊髄を通じて生じることで、無意識のうちに筋肉を動かす仕組みです。



反射による運動制御の仕組み
・感覚器官(皮膚や筋肉など)が刺激を受け取る
・刺激が脊髄に伝わる
・脊髄から運動神経を通じて筋肉に信号が伝わる
・筋肉が動く

反射による運動制御は、随意運動(意識を介して行われる運動)よりも高速な応答を引き起こします。そのためスポーツにおける相手の動きへの対応や、日常生活における歩行や立ち上がり、物への手伸ばしなどの動作に役立っています。反射は、危険からとっさに身を守るときや、身体のはたらきを調節するときなどに役立ちます。例えば、口の中に食べ物を入れるとだ液が出るのは、身体の働きを調節する反射です。

反射は、神経学的障害を診るのに有効でもあります。中枢神経系の障害では病的反射が見られることもあります。



伸張反射の仕組みと機能
伸張反射は筋の受動的な伸展によって生じる反射で、主に姿勢を安定に保つうえで重要な役割を果たすと考えられています。

例えば歩いている時に、たまたま小石につまづいて予測しない姿勢の変化が生じると、筋の伸び縮みや腱の弾かれた変化を捉える受容器である筋・腱紡錘が反応し、筋・腱が伸ばされたという情報を上行性の感覚信号として脳・神経中枢に伝達します。この信号は随意運動とは異なる脳部位や神経経路で処理され、伸ばされた骨格筋を収縮させる運動応答を生成します。伸張反射応答は脊髄レベルの神経経路によって生じる短潜時成分と、大脳皮質運動野まで含む神経経路を経て生成される長潜時成分とを含むことが明らかになっています。

較的応答の遅い長潜時の伸張反射でさえ、刺激の入力から極めて短い反応時間で筋活動が発生するため、反応に少し時間のかかる随意運動と比較して、素早く姿勢の変化を補償することができると考えられています。

伸張反射は入力刺激に対して常に一定の応答が生じるわけではなく、課題や環境の変化に依存して応答の調整がみられることが、これまでの先行研究で示されています。脳はこのような反射系の調整を通して、状況に応じた柔軟な運動制御を行っていると考えられます。

しかし調整計算のために脳内でどのような情報処理が行われているかについての詳細は分かっていません。一例として、 伸張反射の調整が体性感覚情報のみに基づくのか、あるいは視覚情報など他のモダリティにおける感覚情報も統合した身体表象を利用して行われているのかについてはこれまで未解明でした。



運動中視覚情報を操作し伸張反射に影響がみられるか⁈
身体状態に応じた伸張反射の調整の仕組みについて、 2つの仮説が考えられますが、 1つは、伸張反射は体性感覚入力によって生じる応答であることから、その調整も体性感覚に依存して行われるという考え方と、1つは、体性感覚情報に加え視覚情報など他のモダリティの感覚情報も統合した身体表象を介し、より精度良く身体状態を推定し、反射応答の調整に使用しているという考え方です。これらの仮説のどちらがより確からしいかを検証するため、視覚情報を実験的に操作し、 それにより伸張反射が影響を受けるかを専用マシンでの動作を通じて調べてみることにしました。




D.R.E腕マシンを用い、手首の屈曲運動による視覚目標への到達課題を行ってみましたところ、とても良き反応が得られていますので、もう少し検体数を増やして臨床実験に取り組みたいと思います。Instagramで時々その模様をご覧頂くことが出来ます。


協賛

香川県出身の後輩達が母校の水泳部に所属して頑張っているのを耳にしました。

応援の気持ちを込めた贈り物として、讃岐うどんを沢山贈ることにしました。



うどんは主に小麦から作られます。小麦は身体に悪いという意見をよく耳にします。小麦に含まれる物質がアレルギー反応を引き起こすことはありますが、体質の問題がない限り、小麦が身体作りの敵であるというのは誤解です。小麦は人類の食生活において重要な位置を占めており、基本的には炭水化物の一種です。



北村昂大くんと小松千紗さん



人間のエネルギーは大きく分けて炭水化物と脂質の2系統があり、脂質は長時間の運動に適していて、激しい運動には炭水化物が必要です。水泳競技のように強度が高く長時間運動するため、炭水化物が筋肉の迅速なエネルギー源となり必要不可欠です。うどんは、基本的に高糖質で低脂肪ですから、迅速なエネルギー源となり、消化吸収も早いです。


愛妻弁当に入っていたサバ缶…

この時期のお弁当は、食中毒の心配もありますので、お惣菜にも配慮してくれています。先日愛妻弁当にサバ缶が入っていました。サバ缶は、栄養価が高く気軽に食べられるといった理由で人気を集めていて、様々な種類のサバ缶が置いてあるお土産屋さんもあります。

サバ缶の歴史は明確ではありませんが、調べてみますと、1950年代には既に大洋漁業(現・マルハニチロ)がサバの水煮缶をヨーロッパや東南アジアに輸出していたそうです。サバ缶は手軽に良質なタンパク質を摂取できる貴重な食材です。アジア大会7連覇の偉業を持つ元ボディービルダーの小山裕史氏が、苦学生時代に貴重なタンパク源として摂っていたと話しておられたことを覚えています。

サバ缶には、DHA・EPAという2つの不飽和脂肪酸が、生のサバよりも多く含まれています。生のサバは基本的に身しか食べないのに対して、サバ缶は骨や皮も食べられるため、DHAは生のサバの約2倍、EPAは生のサバの約4倍多く摂取出来るのだそうです。脳の働きを良くするDHAは、認知症予防や子どもの記憶力向上、判断力アップ効果に期待されます。EPAは血管を強くして中性脂肪を減らす働きがあります。

また、骨を強くするビタミンDのほか、ビタミンB群やビタミンE、ナイアシンなど、身体を強くしたり、脳の働きを良くしたりする成分も多く含まれています。その他、体内の炎症(ガンのもとになる)の発生を抑え、血糖値を下げ、血圧を下げる。太りにくくする(脂肪燃焼)といった働きをします。



サバ缶を使ったお惣菜として簡単なのは煮物にすることです。サバ缶の中身を鍋に入れた後、塩分を抑えるために水を加え、豆腐とネギを足すだけでサバの煮物になります。深ネギを入れることでビタミンB1が摂取出来るばかりか、サバの栄養の吸収をも助けます。

また、サバはプリン体を含むため、食べ過ぎると痛風になる恐れがありますので気をつけなくてはなりません。トマトはプリン体の吸収を抑えるため、トマト煮にするのもよいでしょう。また、これは好みですが、スライスした新タマネギとつぶしたサバを混ぜてあえ物にするのもよいと思います。新タマネギにもビタミンB1が豊富に含まれています。ニラやネギを一緒に摂れば、良いでしょう。

この他、食物繊維が含まれる食品を一緒に摂取すると、EPAの吸収が助けられます。煮物にした時にしめじなどのキノコを入れるのもお勧めです。サバ缶と組み合わせるのがNGの食品は特にありませんが、1缶当たり350kcalほどあります。サバの部位によってカロリーが変わる傾向にありますが、お腹の部分は、カロリーが2倍ほど高いとされています。毎日食べるのは、控えた方が良いかも知れませんね。

お弁当のお惣菜の1品として、いかがでしょうか?


スポーツ選手の見るチカラ

ピッチャーマウンドからホームベースまでの距離は18.44mです。

例えば、ピッチャーが投げた球が時速150kmで減速せずにこの距離を進むと仮定すると、わずか0.44秒でキャッチャーミットに到達します。バッターは、ピッチャーがボールを放った約0.5秒以内にバットを振りぬいて当てなければならないことになりますが、バッターは、どのようにして球を打ち返しているのでしょう?

人間が物を見る視覚の仕組みには、意識的な視覚と無意識な視覚の二通りあります。



意識的な視覚は、日常的によく用いている仕組みです。物があることをしっかり知覚し、さらにそれが何であるかを認知するような見方になっています。目に入った光情報は、電気信号として視神経に伝わり、外側膝状体を経由し、大脳の後頭葉にある一次視覚野にまで到達します。この過程(赤線)を経て物が見えることになります。

無意識な視覚は、視神経を伝わってきた信号が外側膝状体に届く前に上丘という部分に到達します(青線)。視覚野には伝えられていないので物が見えたという自覚もありませんが、目から入ってきた情報が脳内で処理されているという点で視覚の1つとされています。



意識的な視覚は、まず一次視覚野へ投射され、傾きや線分などの単純な視覚特徴が抽出されると考えられています。この到達した情報が、さらに二次視覚野に送られて、見えた物の属性を分析・解釈されるなどの高次的処理が行われ物体認知が行われます。高次の視覚野からのフィードバック回路も確認されているため、初期の視覚野が低次の領野という訳ではありません。これらの処理を経て、例えば、球がバットに当たって飛んでいったとように言葉で表せるような情報となります。

ですので、ある程度時間がかかり、解釈が加わるので現実と異なることもあります。錯覚などが起きるのは、この意識的な処理の所為です。また、しっかりと物を見る必要があるので、いわゆる中心視(見ている先に焦点を合わせて見る見方)が行われます。

無意識な視覚は、非常に単純で対象物が何かは分かりませんが、どこにあってどう動いているかといった限られた情報だけが処理されています。意識的な脳による解釈が入らないので、迅速かつ正確です。また、しっかりと物を見るというより、ぼんやりと全体を見渡す、いわゆる周辺視が使われています。

無意識な視覚は、もともと原始的な動物が獲得した神経系の仕組みで、反射的です。例えば、動物は視力が弱く、静止している周囲の景色はほとんど見えていないそうで、近くで獲物を発見すると無意識な視覚で素早く反応して捕らえ食べることが出来るのだそうです。


赤ちゃんは、視力が弱いので物をはっきり捉えることができません。その代わり無意識な視覚を使って、自分にとって危険が及ぶかもしれない動くものを見つけることを得意としています。だんだんと成長していくにつれ、意識的な視覚が発達し、大人になると無意識な視覚をあまり使わなくなってきます。

しかし、いざというときに「無意識な視覚」が役立ちます。たとえば、自動車を運転中に危険を察知するためには、目の前の一点をじーっと注視していてはダメです。できるだけぼやーっと、全体を何となく見渡すという見方をする必要があります。そうすることで、急に飛び出してきた人がいても素早く気づいて、反射的にブレーキをかけることができます。

野球などのスポーツも同じです。ピッチャーが投げるボールをしっかりと見つめてはダメなのです。「無意識な視覚」でぼんやり全体を見る感じで待ち、考える前に反射的にバットを振らなければ間に合いません。大谷選手も、この「無意識な視覚」をフルに研ぎ澄ませることで、大リーグの超速球に反応できていると考えられます。

とは言っても、早くバットを振ればホームランが打てるわけではありません。「無意識な視覚」でバットを振りながらも、的確な位置でボールに当てて全力で振り切れる大谷選手は、やはり「超人」なのでしょう。


お問い合わせ・お申し込み