運動が脳を守る新たな仕組みについて
| 脳・神経
先日、腹筋を動かすことは体幹を安定させるだけでなく脳の老廃物を洗い流すポンプの役割を果たし、脳の健康を保つ上で極めて重要な働きをしていることが最新の研究により分かったと話題になったばかりですが、運動が脳を守る新たな仕組みとして、運動によって骨格筋で増加したミトコンドリアが、血小板を介して脳へ運ばれるという新しい生体防御機構を明らかにした順天堂大学研修班が居ます。
これは、運動をさせてあげることが困難な弱者の方にも応用可能で、例えば脳卒中後遺症や血管性認知症に対する新たな治療戦略につながる可能性があります。
これまで私も長年医療機関で働いていましたが、脳梗塞に対して血栓回収療法や血栓溶解療法といった急性期治療が大きな効果を上げておられました。しかし、これらは発症から限られた時間内にしか適用できませんし、脳卒中受傷後180日しか保険適応されず、多くの脳卒中患者では急性期以降、後遺症を軽減するための対症的な治療やリハビリテーションが中心となっていました。
また日本を含む多くの国が超高齢社会を迎える中で、サルコペニア(加齢に伴う筋肉量低下)やフレイルは、脳卒中後の機能回復を妨げる重要な因子と考えられ、分子・細胞レベルでの仕組みは十分に解明されていませんでしたが、運動が脳卒中の予防や回復に有効であることは経験上知られていることです。
近頃では細胞間でミトコンドリアが移動し、障害を受けた細胞を保護する細胞間ミトコンドリア移行という新しい概念が注目されていますが、運動させることによって骨格筋内のミトコンドリア量と機能が増加し、それらが血液中に放出され、血小板に取り込まれます。また運動することによって増加した骨格筋由来のミトコンドリアが、血小板によって脳へ運ばれています。
ミトコンドリア移行は単なるエネルギー供給にとどまらず、脳内細胞間の恒常性維持や炎症制御にも関与している、ミトコンドリアそのものが分泌因子として働くと考えられています。医療技術が進歩しても心臓血管系の病は減るどころか増えています。是非とも今後の研究成果に期待したいところです。
ところで一般的な腹筋運動は、安静時の約3.8倍の運動となります。これは速足で歩くのと同じくらいで、日常生活では風呂掃除・床磨き・ガーデニングと同じくらいになります。同じ安静時の約3.8倍の運動なのに腹筋運動は何故キツいのでしょう⁈。
実は、同じ運動強度であっても血流を阻害する様式(動作)で行なっているためです。同じ安静時の約3.8倍の運動をしても息が上がったり心臓がバクバクするのは、血流が悪くて酸素が行き届いておらず体内の水素濃度が高まってしまったからでしょうね。
でも脳の老廃物を洗い流すポンプの役割を果たし、脳の健康を保つのに、安静時の約3.8倍の運動が適しているのでしたら、キツい腹筋じゃなく速足で歩くのがしたいですね。
運動が脳を守る新たな仕組みでは、安静時の何倍の運動が適しているのでしょうかね?こちらも気になって仕方ありませんね。

