ホームブログ脳・神経

ブログ

迷走神経を刺激する

迷走神経は、脳神経の1つで、人体で最も長く複雑な経路を持つ神経です。副交感神経として、心臓、肺、消化器系など、多くの内臓器官の機能を調節しています。また、感覚神経としても働き、咽頭、喉頭、外耳道などの感覚を伝えています。

同期のインド人から、運動・シャワー・瞑想によって迷走神経を刺激することで、多くの疾患との関連性が高い慢性炎症の予防や抑制につながる可能性があることを教わりました。我々の行う神経筋制御論に沿った運動法を指導している際にも幾度と確認されましたが、反射を伴う動作によって身体の動きのキレやしなやかさを取り戻すことで、神経系の不具合をリセットさせることができ、炎症を抑える効果が期待出来るのです。



1日おき、もしくは2日おきに運動する
週4〜5回ほど、1回あたり30〜45分かけ神経筋制御論に沿った運動(お散歩・やまおく体操)を行っています。



運動が健康に良いことは誰もが知っているが、その健康効果のメカニズムについては科学者たちもまだ完全には理解していません。例えば、定期的にお散歩を習慣にすると、安静時の心拍数が下がり、心拍変動(拍動の間隔の変動幅)が高くなることがわかっている。これは心臓が効率よく機能していることを示している。迷走神経には心拍数を抑える働きがあることから、この効果は運動によって迷走神経の活動が高まるためではないかと考えられている。しかし、この関連性を確実に証明するには、さらなる研究が必要です。

安静時の3〜4.5倍の運動を定期的な継続によって必要以上の筋細胞を保持維持し、代謝機能や心臓血管系の衰えを予防することが大切です。





冷たいシャワー
入浴終わりに2~3分間だけ冷水を浴びます。そうすることで身体の闘争・逃走反応が引き起こされ、炎症を抑制します。



冷水を浴びると最初は心拍数が上昇するが、その後、副交感神経系が活性化され、呼吸や心拍数が落ち着くことが研究で示されています。

このことは冷水の刺激が迷走神経を活性化している可能性を示していますが、抗炎症作用についてはまだ明らかにされていません。




瞑想
運動してシャワーの後、10分間の瞑想を行います。



瞑想の数多くの研究でも、瞑想を行った人々は対照群と比べて炎症を示す血中のバイオマーカーの数値が低かったことが明らかになりました。瞑想によって炎症が軽減する可能性が示される文献も多くありますが、さらなる検証が必要です。

瞑想を繰り返すことで瞑想するのが上手くなる頃には、迷走神経の活動を高め炎症を抑える可能性が出て来ますが、未だ科学的根拠は見つかっていません。





迷走神経が健康にもたらす影響は、それだけにとどまらないことを示す文献が、他にも幾つも見つかっています。


学んだことが身につくときの脳の変化について…

記憶とは、学習の延長線上の現象です。
学習された情報が、どのように記憶として脳内に残されてるかについて、実は、そんなに分かっていませんでした。

私達にも長年の想いがあり、ある反復練習をし続けることによって身体が運動を覚える仕組みを知りたいと思っていたところですが、某大学研究班が、マウスを使った実験を通じて大脳皮質の神経回路の構造変化を捉えることに成功されていましたので、その経過をご紹介しつつ、運動指導者としての私の考えをも記しておきたいと思います。



脳では、神経細胞間で情報が複雑にやり取りされ、巨大なネットワークを形成されています。特に神経細胞間で情報を伝達する結合部はシナプスと呼ばれ、学習や記憶に非常に重要な働きをしていると考えられています。

実際に、マウスに特定の課題(運動トレーニング)をさせると、第一次運動野(大脳皮質の中の運動を担う領域)で、新たなシナプスが形成され、図のように神経回路が変化していることは分かっていました。

神経細胞間の情報伝達において、シナプスの強さが一時的に変化し、後に元に戻る性質のことをシナプスの可逆性と言います。これは、経験や学習によって脳が変化していくシナプス可塑性の一側面として理解出来ます。しかし、それを神経回路の変化として明らかにした研究が少なく、どの領野からの情報が、学習や記憶に重要なのかなど、その詳細も知られていませんでした。

そこで、学習過程において変化するシナプス結合を明らかにすることで、例えば自転車の乗り方や楽器演奏などの動作が、練習することで上達し、徐々に無意識に行えるようになる脳内メカニズムが明らかになるものと考えられました。



図の左側の学習前のシナプスは、GABAとグルタミン酸が分泌され興奮と抑制のバランスを取っています。図の真ん中の学習を始めると一時的にGABA分泌が減り、AMPA受容体のシナプス移行によってシナプスの機能と伝達効率を変化させます。図の右側の学習し続けると、GABAの分泌量は、元に戻り、グルタミン酸の分泌量が増え、興奮と抑制のバランスを保っています。

GABA(ギャバ)とグルタミン酸はどちらも脳内の神経伝達物質ですが、GABAは抑制性、グルタミン酸は興奮性というように、機能は真逆です。GABAはグルタミン酸から合成されますが、脳内で物質交換を制限する血液脳関門を通過できないため、食事やサプリメントで直接摂取しても脳の働きを助けることはできません。



人は無意識的な反射を予測して身体の動きを制御している…

運動神経が必要なのは、スポーツや楽器演奏といった高度なスキルが求められる場面ばかりではありません。グラつかづに立ったり、初めの一歩を歩みだしてまっすぐ歩くといった何気ない動きの背後にも、小脳と大脳皮質との連携プレーが、活躍しています。姿勢維持で大切な機能の1つに予測的姿勢調節があります。例えば、机に置いたペットボトルを右手で取って、立ったまま飲む動作について考えてみましょう。

片腕の重さは、約4〜5キロ。右腕を前に差し出すだけでも重心の位置は、前になるはずです。ペットボトルを持つと更に重心が前に振られます。それでも倒れないのは、腕を伸ばす前に、重心が前へ移動しても平気なように体幹や下半身の筋肉を適度に制御・抑制するからです。これが予測姿勢調節であり、その一連の命令も小脳が深く関わっています。スポーツでは、ペットボトルを手で取るよりも遥かに複雑な動作を組み合わせていますので、予測姿勢調節は、一層重要になります。

このようにスポーツでのスーパープレーから我々の何気なく行っている日常の動作まで、脳からの指令だけでなく筋肉や皮膚からの信号が脊髄を通じて生じる反射が、身体の動きを支えています。

その1つである伸張反射が、多感覚統合による身体表象を介して調整されることが、最新の研究成果より分かってきました。反射による運動制御が、従来考えられてきたより高度な脳内情報処理を経て行われている可能性を示唆しています。反射による運動制御とは、外界からの刺激に対して、意識を介さずに運動応答を生成する仕組みです。反射は、筋肉や皮膚からの信号が脊髄を通じて生じることで、無意識のうちに筋肉を動かす仕組みです。



反射による運動制御の仕組み
・感覚器官(皮膚や筋肉など)が刺激を受け取る
・刺激が脊髄に伝わる
・脊髄から運動神経を通じて筋肉に信号が伝わる
・筋肉が動く

反射による運動制御は、随意運動(意識を介して行われる運動)よりも高速な応答を引き起こします。そのためスポーツにおける相手の動きへの対応や、日常生活における歩行や立ち上がり、物への手伸ばしなどの動作に役立っています。反射は、危険からとっさに身を守るときや、身体のはたらきを調節するときなどに役立ちます。例えば、口の中に食べ物を入れるとだ液が出るのは、身体の働きを調節する反射です。

反射は、神経学的障害を診るのに有効でもあります。中枢神経系の障害では病的反射が見られることもあります。



伸張反射の仕組みと機能
伸張反射は筋の受動的な伸展によって生じる反射で、主に姿勢を安定に保つうえで重要な役割を果たすと考えられています。

例えば歩いている時に、たまたま小石につまづいて予測しない姿勢の変化が生じると、筋の伸び縮みや腱の弾かれた変化を捉える受容器である筋・腱紡錘が反応し、筋・腱が伸ばされたという情報を上行性の感覚信号として脳・神経中枢に伝達します。この信号は随意運動とは異なる脳部位や神経経路で処理され、伸ばされた骨格筋を収縮させる運動応答を生成します。伸張反射応答は脊髄レベルの神経経路によって生じる短潜時成分と、大脳皮質運動野まで含む神経経路を経て生成される長潜時成分とを含むことが明らかになっています。

較的応答の遅い長潜時の伸張反射でさえ、刺激の入力から極めて短い反応時間で筋活動が発生するため、反応に少し時間のかかる随意運動と比較して、素早く姿勢の変化を補償することができると考えられています。

伸張反射は入力刺激に対して常に一定の応答が生じるわけではなく、課題や環境の変化に依存して応答の調整がみられることが、これまでの先行研究で示されています。脳はこのような反射系の調整を通して、状況に応じた柔軟な運動制御を行っていると考えられます。

しかし調整計算のために脳内でどのような情報処理が行われているかについての詳細は分かっていません。一例として、 伸張反射の調整が体性感覚情報のみに基づくのか、あるいは視覚情報など他のモダリティにおける感覚情報も統合した身体表象を利用して行われているのかについてはこれまで未解明でした。



運動中視覚情報を操作し伸張反射に影響がみられるか⁈
身体状態に応じた伸張反射の調整の仕組みについて、 2つの仮説が考えられますが、 1つは、伸張反射は体性感覚入力によって生じる応答であることから、その調整も体性感覚に依存して行われるという考え方と、1つは、体性感覚情報に加え視覚情報など他のモダリティの感覚情報も統合した身体表象を介し、より精度良く身体状態を推定し、反射応答の調整に使用しているという考え方です。これらの仮説のどちらがより確からしいかを検証するため、視覚情報を実験的に操作し、 それにより伸張反射が影響を受けるかを専用マシンでの動作を通じて調べてみることにしました。




D.R.E腕マシンを用い、手首の屈曲運動による視覚目標への到達課題を行ってみましたところ、とても良き反応が得られていますので、もう少し検体数を増やして臨床実験に取り組みたいと思います。Instagramで時々その模様をご覧頂くことが出来ます。


スポーツ選手の見るチカラ

ピッチャーマウンドからホームベースまでの距離は18.44mです。

例えば、ピッチャーが投げた球が時速150kmで減速せずにこの距離を進むと仮定すると、わずか0.44秒でキャッチャーミットに到達します。バッターは、ピッチャーがボールを放った約0.5秒以内にバットを振りぬいて当てなければならないことになりますが、バッターは、どのようにして球を打ち返しているのでしょう?

人間が物を見る視覚の仕組みには、意識的な視覚と無意識な視覚の二通りあります。



意識的な視覚は、日常的によく用いている仕組みです。物があることをしっかり知覚し、さらにそれが何であるかを認知するような見方になっています。目に入った光情報は、電気信号として視神経に伝わり、外側膝状体を経由し、大脳の後頭葉にある一次視覚野にまで到達します。この過程(赤線)を経て物が見えることになります。

無意識な視覚は、視神経を伝わってきた信号が外側膝状体に届く前に上丘という部分に到達します(青線)。視覚野には伝えられていないので物が見えたという自覚もありませんが、目から入ってきた情報が脳内で処理されているという点で視覚の1つとされています。



意識的な視覚は、まず一次視覚野へ投射され、傾きや線分などの単純な視覚特徴が抽出されると考えられています。この到達した情報が、さらに二次視覚野に送られて、見えた物の属性を分析・解釈されるなどの高次的処理が行われ物体認知が行われます。高次の視覚野からのフィードバック回路も確認されているため、初期の視覚野が低次の領野という訳ではありません。これらの処理を経て、例えば、球がバットに当たって飛んでいったとように言葉で表せるような情報となります。

ですので、ある程度時間がかかり、解釈が加わるので現実と異なることもあります。錯覚などが起きるのは、この意識的な処理の所為です。また、しっかりと物を見る必要があるので、いわゆる中心視(見ている先に焦点を合わせて見る見方)が行われます。

無意識な視覚は、非常に単純で対象物が何かは分かりませんが、どこにあってどう動いているかといった限られた情報だけが処理されています。意識的な脳による解釈が入らないので、迅速かつ正確です。また、しっかりと物を見るというより、ぼんやりと全体を見渡す、いわゆる周辺視が使われています。

無意識な視覚は、もともと原始的な動物が獲得した神経系の仕組みで、反射的です。例えば、動物は視力が弱く、静止している周囲の景色はほとんど見えていないそうで、近くで獲物を発見すると無意識な視覚で素早く反応して捕らえ食べることが出来るのだそうです。


赤ちゃんは、視力が弱いので物をはっきり捉えることができません。その代わり無意識な視覚を使って、自分にとって危険が及ぶかもしれない動くものを見つけることを得意としています。だんだんと成長していくにつれ、意識的な視覚が発達し、大人になると無意識な視覚をあまり使わなくなってきます。

しかし、いざというときに「無意識な視覚」が役立ちます。たとえば、自動車を運転中に危険を察知するためには、目の前の一点をじーっと注視していてはダメです。できるだけぼやーっと、全体を何となく見渡すという見方をする必要があります。そうすることで、急に飛び出してきた人がいても素早く気づいて、反射的にブレーキをかけることができます。

野球などのスポーツも同じです。ピッチャーが投げるボールをしっかりと見つめてはダメなのです。「無意識な視覚」でぼんやり全体を見る感じで待ち、考える前に反射的にバットを振らなければ間に合いません。大谷選手も、この「無意識な視覚」をフルに研ぎ澄ませることで、大リーグの超速球に反応できていると考えられます。

とは言っても、早くバットを振ればホームランが打てるわけではありません。「無意識な視覚」でバットを振りながらも、的確な位置でボールに当てて全力で振り切れる大谷選手は、やはり「超人」なのでしょう。


医療保険や介護保険の縮小により、自費リハ・義肢装具開発への期待が高まる

今回の研究で明らかになったシナプス前抑制の運動制御での利用がうまく行われないと、不要な情報処理にエネルギーを使うために疲弊しやすい上に、必要な情報の処理に十分なリソースが割けなくなり、適切で効率的な運動制御ができなくなると考えられます。

これは症状として感覚運動異常を示す疾患のいくつかを共通して説明し、新たなリハビリテーション技術の開発につながる成果にもなります。しかし、医療保険や介護保険が縮小され、自費でリハビリテーションが受けられる施設への期待がかかりますが、シナプス前抑制の運動制御での利用がうまくなる設備や指導法が、従来の運動施設では、確立されていません。



シナプス前抑制の運動制御での効率的な利用は、運動学習によるものである可能性が考えられます。アスリートのトレーニングなどに、シナプス前抑制による感覚増強や減弱の考えを取り入れた訓練方法を開発することにより、従来法では実現できないレベルの競技力向上などが期待されますが、キツい運動だと、怪我や故障の心配が伴いますし、一般の方々が継続して利用するんは、ハードルが高いと思われます。

ヒトの運動をアシストするために開発される様々な機械の開発にも応用が期待されていますが、神経興奮(神経インパルス)を末梢より中枢に上手く伝えられる装置では無いため、求心性神経を傷めたり、疲れやすくなったりするなどの感想も多いのが心配されています。



例えば、交通事故や神経筋疾患などさまざまな理由によって手足の運動機能に障害をもち、義肢装具を利用する方々に対し、生体でのシナプス前抑制の仕組みを義肢装具制御に応用することにより、より本物に近い義肢装具が開発でき、障害を持つ方の生活の質の向上が期待されます。



神経筋制御論に沿った運動法によって生まれた運動器具を応用した「やまおくシューズ」の開発にも成功しました。将来的に義肢装具開発にも力を注ぎ、障害がある無いに関わらず、健康スポーツサービスを受けられるようにして行きたいと思います。


お問い合わせ・お申し込み