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覚えたいことを口に出して言う(暗唱)

以前、Journal of Experimental Psychologyに掲載された研究によると、言葉を口に出して言ったり口を動かすだけでも、その言葉が弁別されるのだそうです。

頭の中に浮かんでいる、他のあらゆる単語と区別され、違うものに変わります。それによって言葉が記憶に残りやすくなります。なかなか他人のお名前が覚えられない人は、その人にお会いした時に、相手のお名前を口に出して話したり、心の中でお名前をお呼びしたりすると、会ったばかりでも、直ぐにお名前を覚えることが出来ます。

暗記学習に音読がおすすめなのは、音読をすることで脳の前頭前野という部位が活性化され、記憶力や判断力がアップするとも言われていますので、導入している学習塾も多いかと思われます。

僕は、暗唱したりするのは、経験上成功して来たこともありますが、脳科学的に関連あるものだと、ずっと思って来たので続けていましたが、どうも違うことが分かり複雑な心境になっています。



脳波とパフォーマンスの関係をご覧になられると、よく分かります。α波は、目覚めた状態でリラックスしていたり、集中している状態の時に、後頭部に著明に現れ、β波は、目覚めている時に通常出ている脳波で、緊張や心配事がある場合にも現れます。θ波はまどろみの時に、δ波は熟睡中や無意識の時に現れます。

暗唱するのを脳の働きから考えてみますと、先ず左脳は、言語脳で言語の処理を中心に行っています。左脳は、右脳よりも強力ですが、その分活動が粗いので、主にβ波を出しているのではないかと思われていました。最近では、音読などの言語的活動を行うと脳が活性化するそうですので、左脳がβ波が出しているとは言い切れないそうで、脳が活性化するということと音読をすると頭が良くなるということは、脳科学的には、関係がないのでは、と言われています。

左脳は、デジタル的な処理をしているので、短期記憶に制約されています。ですから言語処理をするときは、逐語的に少しずつ処理しては忘れていっています。 例えば、小説などの物語を読むとき、数語又は十数語の文字列から次々とイメージを作り、前の文字列はどんどん忘れながら読んでいきます。最後にストーリー全体はわかっているものの、個々の文字列は記憶に残っていません。

右脳は、イメージ脳で、イメージや音楽の処理を行っています。 右脳の処理はアナログ的なので、短期記憶に制約されません。例えば、景色を眺めているとき、その景色の中にある無数の要素がひとまとまりに頭の中に入ってきます。 例えば、雲1つ無い真っ青な空、静かに風が吹いていて、海辺の波打ち際での潮の音が聞こえる。潮の香り、セミの音、夏なんだなぁと、大量のイメージが一瞬にして右脳のイメージとして処理されます。

右脳の処理は静かですので、α波やΘ波を中心とした脳波になっているのだと思われていましたが、覚えた文章を音読しているときは脳が活性化せずにリラックスします。音楽を聴いていると心がリラックスするのはこのためですが、覚えた文章を音読しているとき右脳では、α波やΘ波を出しているとは言い切れないことが分かりました。脳がリラックスするということと音読をすると頭が良くなるということは、脳科学的には、関係がないのでは、と言われています。

記憶術の仕組みは、アナログのイメージはいくらでも記憶に残り、そのアナログのイメージに、覚えにくいデジタルの記憶を結びつけているようなものです。 暗唱は、言語をデジタル的に覚えるものなので、一度で覚えられるのは短期記憶の容量となる7文節ぐらいまでに限られています。30〜50文字なら一度で覚えられますが、これが100字ぐらいになると短期記憶の容量を超えてしまいます。ですが100字の文章であっても何10回と繰り返すと、丸ごと暗唱できるようになりますから、暗唱することをお勧めします。


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