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お散歩の科学 Ⅱ

頭の働きが良くなる
歩くのに動員される筋肉は、複雑に関わっています。歩いているとき、筋紡錘からは伸び縮みの信号を、腱紡錘からは腱が弾かれた信号を脳が読み取り、筋活動や関節の角度などの情報を常にモニターリングし、リアルタイムに情報を処理して取り入れながら、微調整を行っています。

また、歩いているとき、脳は、感覚情報も処理しています。例えば、すれ違う人に対応したり、道を選んだり、音を耳にしたり、匂いにつられてお昼のお店を変えたりと、視覚・聴覚・嗅覚などの感覚情報の処理も、歩くことで強化され、脳をより活発に活動させると考えられています。

受動的ではなく、自分から能動的に感覚情報を取りに行くと、神経細胞の活動が10倍も高くなることも確認されています。歩くと脳が警戒モードになって、脳の前頭前野などが活発に活動し、積極的に情報を取り込むのでしょう。歩きながら思索を深めたり、新たなアイデアが湧いてくるのは、その所為でもあると考えられています。



実際に歩くことで全身の血行が良くなり、脳の血液循環が促され、思考を司る脳の働きがアップします。また、歩くことで筋肉からイリシンというホルモン物質が分泌されます。イリシンは脳へ侵入し、脳で記憶や学習に関わる海馬という部分に作用すると、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が分泌されます。

このBDNFの働きにより、脳の神経細胞が増えたり、神経細胞同士をリンクするシナプスと呼ばれる接点が増えたりして、記憶や学習能力が高まることがわかっています。つまり歩いて脳が活性化すれば、認知症予防にもつながるばかりか、頭の働きが良くなります。

1日200リットルの血液が脳を行き来していますが、歩くことで、その10倍の2000リットルの血液が脳を行き来すると言われています。認知症も20~30年ほどかけて発症するものですから、認知症予防のための運動をする場合は、長期的に歩く習慣作りをする必要があるかと思います。


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