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膨大な感覚信号をどのように処理して身体の動きを抑制制御してるのでしょう?

ヒトを含むホ乳類の皮膚・筋肉・関節には、触覚・痛覚・力感覚・位置感覚など様々な信号を受容して脳に伝える細胞(受容器)が多数存在しています。

ヒトが手足を動かす際、それらは現在の身体の状態を刻一刻と大脳皮質(脳)へと送り続けています。例えば、野球のバッターがボールを打つ際には、1トンの物を動かせるほどの力が瞬間的にバットにかかります。このような非日常的な力が身体に与えられた時に、全身の受容器は一斉にそれぞれの活動を高めるため、神経系は膨大な量の感覚信号を一斉に受け、パンク状態になるのかも知れませんが、バッターはそんな状態であっても、バットスイングや足の踏ん張りをコントロールし、狙ったところにボールを弾き飛ばすための動きを続けなくてはなりません。

身体運動の制御における感覚情報の役割は、長年の研究課題でもありますが、様々な仮説が提案されて来ました。

試合中に感じなかったケガの痛みを試合終了後に急に感じ始めるといったアスリートの逸話や、運動中の触覚や聴覚、視覚情報が一時的に低下する現象が実験的にも確認されてきたため、感覚受容器からの信号を運動中に過小評価する仕組みが脳神経系内にあると考えられてきました。しかし、手足の精緻な運動制御に最も重要である固有感覚も同じように運動中に過小評価されるのか、またその具体的なメカニズムに関しては明らかではありませんでした。



シナプスには、情報を受け取るニューロンを興奮させる興奮性シナプスと、情報を受け取るニューロンの興奮を抑える抑制性シナプスがあり、アセチルコリン、ノルアドレナリン、グルタミン酸などの科学物質によって伝達されています。



興奮性のシナプス伝達をするシナプス前ニューロンの神経終末部にシナプスを作り、そこからの興奮性物質の放出を減少させて、興奮性シナプス伝達効果を抑制する仕組みをシナプス前抑制と言いますが、運動する時に発生する手足の感覚信号が、シナプス前抑制という仕組みによって調節されていて、この調節によって運動が巧みにコントロールされていることが、国立精神・神経医療研究センター神経研究所モデル動物開発研究部の関和彦部長と窪田慎治室長によって明らかになりました。


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